どこかで育て方を間違えたのかしら……
赤ちゃんの生理的な離乳に対し、親から子供が自立していく過程は『心理的離乳(3段階あり)』と呼ばれています。
その始まりにあたるのが『思春期の反抗期』です。
周りの大人に対し自己主張をし始めたり、言うことを聞かなくなったり、とその態度は様々。
親に向かう反抗もあれば、親から遠ざかっていく反抗もあります。
「どうしてこんな子に……」
と悲しい気持ちになってしまうお母さんも多いかと思いますが、
それは間違った育て方どころか、お子さんの『成長の証』でもあるんです。
ただ、この時期の接し方を間違えてしまうと、ますます悪化させてしまったり、今後の親子関係にヒビが入ってしまうことも。
── ということで、
『思春期の子どもたちは、どのようなことを考えているのか』
『どうして反抗的な態度をとるのか』
反抗期をむかえたお子さんの気持ち、そして、
『どのように向き合っていくのがベストなのか』
について紹介いたします。
お子さんと一緒につらい反抗期を乗り越えていけますように!
~ 目次 ~
中学生が迎えているのはこんな時期
とにかく何もかもが目まぐるしく変化している時期です。-
◎身体的変化
- 第二次性徴による身体の変化(初潮・胸のふくらみなど)
→ 親の体格と変わらなくなってくる(または逆転する)
→ 身体の成熟具合も親と変わらなくなってくる - 中学校に入ることで
→ 部活や友だちとの付き合いなどで親と過ごす時間が減る
→ 親にちょっとした秘密を持つようになる - しっかりしたものの考え方・抽象的なとらえ方ができるようになってくるため
→ 今まで持っていた価値観(親から与えられたもの)や考え方を改めて問い直すようになる
→ 今までのように親と自分を同じ存在のように同一視するのではなく、『自分』という1つの存在として意識するようになる - 思春期に入り性ホルモンの分泌が急激に起こる
→ 怒りや悲しみ、恐怖などの情動や本能を担当している部分(大脳辺縁系)の活動も急激に活発化
→ 一方、こうした感情を制御する部分(前頭前野)は非常にゆっくりと発達(20代になっても発達し続ける)
→ 2つのバランスが取れていないことが、衝動的な行動などを引き起こす
◎社会的変化
◎心理的変化
◎脳の変化
すでに子どもではなく大人になりかけている状態。
中学生・思春期というのは、このような変化の中で、
『親との関係を新しく作り上げていこう』
としている時期です。
反抗的な態度があってもなくても、それは同じ。
お子さんが変化していく時期であることに違いはありません。
では親との関係を再構築していこうとしている相手(お子さん)に対してどのように接すればいいのか。
親サイドもお子さんの変化に合わせて対応を変化させていく必要があるんです。
もう少しだけお子さんの心の中を覗いていきましょう。
反抗期のお子さんが一番強く思っていること
『自分が大人であることを証明したい!!』思春期のお子さんが(無意識で)強烈に感じているのはこれ。
もう子どもじゃない!! ということを周りの大人たちに示したくてたまらないんです。
ですので一番イヤなのは大人(特に親)から、子ども扱いされること。
切望している『大人証明』を否定されれば腹も立ちます。
子ども扱いというのは、簡単に言ってしまえば今まで通りの接し方をされることです。
いろいろな変化の中、成長し続けている自分を全く認めてもらえていないような気にもなってきます。
これは面白くない。
結果、自分が大人であることを証明するために、子ども扱いする親と必死で闘うことになります。
- これまでと同じように口出しされたり指示を受けると反発
- 褒めたり励ましたりしても裏の意味を探ろうとする
- 親の考えを受け入れたくない(自分の考えは正しい、という思いから)
- 子どもにとって親から言われることは『上から』になる
思春期に入るまでは、
「そろそろ寝なさい」
「いい加減、ゲームはやめる!」
「いうこと聞きなさい!!」
などにも比較的素直に従っていたと思います。
変化前だったので、親の言うことを聞くのは当たり前のことだったんです。
でも、もうすでに変化は始まっています。
先ほど書きました通り、
親と身体の大きさも機能も、それほど変わらず、小さな時ほど一緒の時間を過ごすこともなく、自分なりの考え方もできるようになり、
ついでに脳の発達的にアンバランスな精神状態にもなりやすい時期。
上から言われると、そのさらに上に行こうとして反発が起こります。
親が『ならば!!』と負けじと上から被せれば、反発はより大きなものに。
こうして親子の間に『敵対』する心が芽生え、これが徐々に『反抗』に移行。
少しイキがってる程度だったお子さんの態度がどんどんエスカレートしていくことになります。
ご両親からすれば、
「これまでと同じように接してるだけなのに……」
になるのですが、それがいろいろな変化の中で『心理的離乳』をしようとしているお子さんにとっては我慢ができないくらいイヤなんですね。
また、親の言うことを素直に聞くことへの疑問に加え、思春期のお子さんは今までにないおかしな考え方をするようなります。
思春期に現れるおかしな考え方
それがこちらの5つ。
-
① みんな自分の敵だと思え!
-
② 人生にいいことなんて一つもない。親のせいで自分の人生は不幸になっている
-
③ ○○は××に違いない!(偏った思い込み)
-
④ 世の中は自分の思うようには絶対にならない仕組みになっているに違いない
-
⑤ どうせ自分なんてどうしようもない人間なんだ
自分に対しても自信が持てません。
反抗期への対処プラス、こうした間違った考え方に対しても『それは違うよ』とわかってもらう必要が出てきます。
でも、お子さんにとって、親から言われることは大抵『上から』のもので受け入れたくない。
……じゃあ、もう放っておくしかないの……?
ある意味、放っておく、にも近いのですが、
このような状況で最も効果的なのは、
『お子さんを信頼する』
ということ。
信頼しているから、放っておける、といったスタンスです。
ただ放りっぱなしでは『放任』になってしまいますので、フォローは必要。
相談などを持ちかけられたら、上からではなく、お子さんと同じ目線に立ち、横から手助けをしていく形が理想です。
少し具体的にみていってみましょう。
反抗期を悪化させないために
- お子さんの問題解決能力を信頼する
- どうしても気になる(干渉したくなる)なら一旦『子どもが自分でやること』『親が自分でやること』を分けてみる
→『子どもが自分でやること』には口出ししない
→ たまに声掛けをする
→ 相談されたら一緒に考える - 発想やお子さんに向き合う姿勢を変えてみる
お子さんの問題解決能力を信頼
反抗期を悪化させやすいのは、『過干渉』
『放任』
まだまだ子どもだと思っているご両親としては、ついついいろいろなことに口出ししたくなるもの。
「遊んでばっかりいないで勉強しなさい!」
「学校のお友だちとはうまくいってるの?」
などですね。
お子さんが小学生ならまだいいんですが、すでに大人になりかけている中学生のお子さんにとって、これはうっとうしいだけ。
お母さんにとっては、単に、
「何か不安があったりトラブルに巻き込まれたりしてないかしら?」
のような気持ちから出てくるセリフなんですよね。
イライラさせようとして言ってるわけじゃないんです。
ですが、こういうセリフって、裏を返せば、
「お母さんが言わなきゃ勉強できないんだから」
「お友だちと何かあったらお母さんに言うのよ」
=「あなただけじゃ、解決できないんだから」
=「だってまだ子どもだから」
になってしまうんです。
反抗期のお子さんが大嫌いな『子ども扱い』ど真ん中なんですね。
だから反発する。
そこで先ほど書きました、
『お子さんを信頼する』
の登場です。
『大丈夫。この子は自分の力で解決することができる子』
お子さんの問題解決能力を信頼してあげてください。
なにかあったとき、それを解決するのはお子さんです。
ご両親は、そのお子さんの手助けをする感じ。
仮に干渉されることを嫌がらないお子さんの場合でも同じです。
なにもかもご両親が代わりにやってしまっては、永遠に自立できなくなってしまいます。
それぞれのやることを分けてみる
『それによって最終的にその結果の責任を負うのは誰か』
を基準に分けていきます。
たとえば『勉強』『部活』『友だち関係』などはお子さん担当。
お母さんなら『掃除』『洗濯』『買い物』といった感じです。
そして『子ども担当』のものについては口出しをしない。
というか、ここに口を出すとお子さんの反発は強くなるだけです。
勉強しないで困るのは自分(お子さん)。
成績が落ちてくれば、さすがに「これはマズい!!」と気づくはず。
で、だれにも言われなくても、自分から勉強するようになります。
友だちとトラブルを起こしても、最終的に解決するのは自分です。
心配かもしれませんが、そこは勇気を出して上記の『お子さんの問題解決能力を信頼』。
本当に困ったときにはお子さんはサインを出してきます。
そんなときには、
「なにか協力できることある?」
と声をかけ、「いい」「なんでもない」「うるさい」のように言われたら、それ以上しつこく聞かないようにしてあげてください。
その代わり、しばらく経ったらまた声をかける。
過干渉でもないし、『それはあなたのやるべきことだから』と放り出してもいません。
お子さんも、
『子ども扱いされてない』
『自分でなんとかできるって信じてくれてる』
『いざとなったらいつでも相談に乗ってくれそう』
態度にはなかなか出さないかもしれませんが、ただでさえ不安定でイライラしている気持ちがそれ以上かき乱されることはなくなります。
発想や姿勢を変えてみる
とはいうものの、反抗期なので気になる部分もたくさん出てくるはず。とくに女の子の反抗期には、
『扱いづらくなる』
という特徴があります。
お母さんのほうも軽くイラっときたり『もう! どうしてなの!!』と頭を抱えたくなることもあると思います。
でも、ここで同じ土俵に立って口うるさく注意するのは先ほどから書いています通り、おススメはできません。
本気でぶつかっていく、というのもひとつの手ではあるのですが、ものすごい体力と精神力が必要になってきます。
『今は反抗期だから』とあるていど割り切って接した方が、お互いのためにもよかったりするんですね。
というわけで『発想・姿勢』を変える、です。
悪い面ではなくいい面に注目する
たとえば、- 何度言ってもお弁当箱を自分から出してくれない
→ でもお弁当は毎回全部食べてくれてる - 部屋の掃除をしない
→ でも服装の乱れはない - どうして毎日イライラしてるんだろう
→ 今は思春期。自分を見つめ直してるときなんだ
短所を長所に(結構強引にですが)変えて、改めてお子さんを見てみてください。
心に余裕が生まれてくると思います。
相手は反抗期です。
反抗期は治る(または直る)というより越えていくものなので、実際、魔法のような解決方法というのはありません。
乗り越えられるだけのパワーを保っておくためにも、発想を変えてお子さんを見つめ直してみるのも有効な手段になります。
結果よりプロセス重視
テストの点数が悪かったとか、部活の試合で負けたとか。結果ではなく、
「でもあんなに頑張ってたじゃない。お母さん、見ててなんだか感動しちゃったわ」
のように伝えてあげると、お子さんは『自分はちゃんと見守ってもらえてる』という安心感を得ることができます。
また、『うまくできなかった』という経験は、自分はダメな人間なんだ、の気持ちを強くしてしまいます。
でも『それまでの頑張りは認めてもらえた』ことにより、自分に自信もついていくんですね。
この自信をつけてあげる、ということも大事。
先ほどの『おかしな考え方』にもありましたが、思春期のお子さんは時期的にも自分に価値がないように思い込みがちなところがあります。
自信を順調につけていけば、そうした間違った思い込みも訂正されていくことになるんですね。
悪いのは『行為』 子どものことは信頼する
「イライラして食器を割ったのは悪いこと。でも、この子は悪い子ではない」反抗期なので……いろいろやらかすと思います。
ですが、ここで、
「食器割るなんて、あなたホントに悪い子ね!」
というのはNGです。
食器を割ったくらいで自分の全人格を否定されたらショックすぎます。
(※ 食器はあくまでたとえ)
人格レベルの否定は絶対にダメ。
思春期になったお子さんたちは、
「自分ってどんな人間なんだろう」
「大人になるってどんなこと?」
「私は何のために生きてきたんだろう」
といったことを真剣に考え始めてるんですね。
自分探しの真っ最中。
そして、おかしな方向に偏った考え方もしがちな時期です。
「みんな自分の敵だ!」
「人生にいいことなんて一つもない」
「どうせ自分はどうしようもない人間だ」
など先ほど挙げたおかしな方向に偏った考え方が、いっさい訂正されないまま生きていくことになってしまいます。
『自分は信頼されている』という安心感を奪ってしまうような接し方は、
反抗期だけでなく、その後の親子関係、お子さんの生き方までをも大きく左右してしまうことになりかねませんのでご注意ください。
話をしっかり聞いてあげる
反抗期になってもお母さんとは多少は話す、という女の子は多いと思います。
また、普段はほとんど話さなくても、本当に困ったときなどには勇気を出して話しかけてくるはずです。
そんなときに、
- お母さん目線のアドバイス(というか指図)
- 昔の自分と比較
- 自分ばかり話してしまう
「話さなきゃよかった……」
としか思いません。
お子さんの話はじっくり聞いて、一緒に解決策を考えるようにしてみてくださいね。
自分の考えを伝えるときは?
こちらが感情的になってしまっているときに話し合うのは論外ですが、お子さんが興奮しているときも話し合いはできません。
ただの喧嘩になってしまいます。
お子さんが落ち着いてから、できるだけ2人だけになれる落ち着ける場所で話し合ってみてください。
静かな気持ちで話せば、お子さんだけが興奮して怒りはじめる、というようなことも起きにくくなります。
話の内容もすんなり受けれてくれることも多くなりますよ。
そして伝え方です。
『私が』どう思っているかを伝えていくのが効果的。
-
× 今日は話してくれるのね。なにかいいことあったの?
→ うっせー、ババァ(怒)
〇 久しぶりに○○ちゃんと話せてお母さん、ホントにうれしかった。ありがとね
→ いや……べつに……(軟化)
× いい加減寝なさい!
→ うっせー、ババァ(怒)
〇 最近睡眠不足みたいだけど、大丈夫? なるべく早く寝てくれるとお母さん、うれしいわ
→ わかってるよ……もう少ししたら寝るから(軟化)
序盤で接し方を間違えてしまうと、敵対心のようなものが芽生えてしまうだけです。
- ご両親に信頼されてる
- 任せてもらえてる(大人として扱われている)
- うるさくは言わないけど、いつも見守っていてくれている
- 何かあったときには味方でいてくれる
そしてそれが自信になり、偏ったおかしな考え方も自分の中で徐々に訂正されていく。
自信がつけば、意味もなくイライラすることもなくなるので、心に余裕も出てきます。
『自分は大人だ』『周りもそれを認めてくれている』と感じられれば、反抗する理由もなくなります。
反抗期は厄介ですが、接し方次第ではお子さんのより良い成長につながっていく大事な期間でもあるんですね。
反抗期は自立へのスタート地点です。
以前はこの『自立』だけにスポットがあてられていたのですが、現在では、『自立』プラス、
『自立した後にも続く、親との心理的な結びつきや愛着』
も大事だとされるようになってきました。
実際、上手に反抗期を乗り越えた親子は以前よりも仲が良くなることも多いんですよ。
終わりに……
思春期をむかえる小学校高学年から中学生の時期は、本当にお子さんの変化していくときです。
その変化にご両親も戸惑われるかと思いますが、一番戸惑っているのは本人であるお子さん。
反抗期(思春期)を経て、これまでとは少し違う新しい親子関係がより良好なものになるよう、上手に乗り越えていかれることを祈っております。
また、女の子の場合『暴力』をふるうまでいくことはあまりないかと思います。
せいぜい言葉の暴力止まり。
叩く・蹴るなどの暴力にまでエスカレートするのは、相当なストレスをため込んでしまった結果です。
ていどにもよりますが、あまりにもひどい場合は、ご家族だけでなんとかしようとせず、
児童相談所や精神保健センター、または心を扱う専門家である心療内科や神経・精神科へ相談することも選択肢のひとつとしてあります。
あまり悲観的になりすぎないことも反抗期を一緒に乗り越えていくためには大事です。
最後になりますが、反抗期に特効薬はありません。
お子さんのタイプによっても接し方を微妙に変えていく必要は出てきます。
ですが、お子さんが『もう子どもじゃない!』を証明したいと思っていること、
そのため、子ども扱いされるとイライラすること、
ホルモンのバランスが不安定なため、心のバランスも保てていないこと、は共通しています。
全体的に不安定な時期ですが、
「どうしてうちの子が……」
ではなく、
『うちの子もついに大人への一歩を踏み出し始めたのね(感無量……)』
くらいの気持ちで、お子さんを見守っていていただければと思います。
それでは、長くなってしまいましたが、
最後までおつき合いいただきありがとうございました。
お子さんの反抗期に悩むお母さまの不安が、少しでも薄れていましたら幸いです。
※ 文中に『ババァ』や敬称略の『親』だけの表記など、失礼な部分がいくつかあります。
ごめんなさい <(_ _)>
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